公平と平等のジレンマ②「正当な理由」がないと休めない? ―― 心理的障壁の正体
兵庫県で活動する産業ケアマネの片岡です。
「すみません、明日子どもを病院に連れていきたくて……」
「大丈夫、こっちは任せて! お大事にね…」
笑顔で送り出す。それは本心です。困ったときはお互い様。そのために制度がある。
けれど、その電話を切ったあと、ふと自分自身に問いかける瞬間がありました。
「じゃあ、私は? 私はいつ、どんな理由なら休んでいいんだろう」
「事情がない」という負い目
仕事と介護の両立。仕事と育児の両立。
これらは今や、企業が取り組むべき最優先事項です。
介護や育児という「正当な理由」がある人が、制度を使って休みを取る。
これはまぎれもない「公平」に資する制度です。
しかし、その「公平」が浸透すればするほど、職場には見えない壁が出来上がります。
それは、「特別な事情がない限り、休むことができない?」という空気です。
介護が必要な家族も、幼い子どももいない。
そうなると、心の中に妙な責任感が芽生えることもあるかもしれません。
「みんなが大変なのだから、せめて自分だけは現場に穴を開けてはいけない」
「這ってでも出社するのが、自分の役割だ」
そんな気持ち、少なからず私の中にはありました。
いつの間にか、「健康で、家族に手がかからないこと」が、休みを取る上での「負い目」のようになる。
仕事に穴を開けることなく、責任感で頑張る。
役職がつくと、そんな気持ちはさらに加速していきます。
「リフレッシュのために休みたいなんて、贅沢なんじゃないか?」
「理由がある休み」は権利として認められるけれど、「理由のない休み」は申し訳なさを伴う。
この心理的な格差こそが、実は現場を一番疲弊させている正体ではないかと思うのです。
企業が直視すべき「隠れた離職リスク」
企業側からすれば、「制度を使っている人がいるんだから、両立支援はうまくいっている」と見えるかもしれません。
しかし、その裏側で「事情がない(ように見える)人」が、「自分はいつまでこの役割を続けなければならないのか」と静かに限界を感じているとしたらどうでしょうか。
「支える側」が、自分の人生や心身のメンテナンスを「正当な理由がない」と後回しにし続ける。
もしそんな人で現場の隙間が埋められているとしたら…。
一見うまく回っているように見えて、実は薄氷の上にあるようなものです。
支える側の人間が、「自分も大切にされている」と実感できない限り、本当の意味での「両立支援」は完成しません。
”支える側がマイノリティになる”というこれからの社会の現実
「公平」な制度を作ったその先に、企業がこれから直視すべきは、「これまで隙間を埋めることができた人たちが、これからの社会では圧倒的なマイノリティになる」という現実です。
少子高齢社会において、「誰かが休んだ穴を特定の誰かが埋め続けるモデル」はもう通用しません。
役職者や、小規模の事業場においては経営者が、埋め続けることにも限界があるでしょう。
「公平」な制度を作ったその先には、誰もが等しく立ち止まり、等しく支え合える仕組みへと作り替えることが必要です。
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私、産業ケアマネ 片岡 は
主に兵庫県の企業様を対象に「仕事と介護の両立支援明石事務所」を運営しています。
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